鈴木:J-SPARCのプロジェクトの一つである、THINK SPACE LIFEについても聞かせてください。こちらは宇宙そのものというよりは、宇宙における生活課題を起点に宇宙/地上双方のビジネスを民間企業と検討されているとのことですが、進捗はいかがですか?
伊達木:THINK SPACE LIFEについては、2020年7月に開始して、これまで200社を超える企業が参加されています。2021年には6社と共にアクセラレーションプログラムも始め、より多くの企業に参加いただけるようになりました。
今まで「宇宙なんて関係ない」「どう関わるか分からない」と思っていた企業と私たちが一緒になって、どうしたら地上の技術を宇宙に持ち込めるか検討しています。
地上の製品を使って宇宙ではどんなことができるのか、みんなで論議し、アイデアを出し合うことで製品を作っていく。それが地上でもより高付加価値のものになっていく。そういう活動として、皆さまにご認識いただいています。
鈴木:企業とそこに所属する人の力を引き出しながら、宇宙から与えられるさまざまなシーズ(ビジネスの種)を、地上のビジネスに持ち込めないか、ということですね。
伊達木:はい。宇宙というと、どうしても企業や製品は限定されがちですが、地上をベースにすることでより広がりが持てます。宇宙で利用していただくための準備という形での広がりができて、より多くの方々が参加できるようになります。
4つの宇宙事業カテゴリーの進展
鈴木:私たちも、これまでさまざまな宇宙ビジネスに関わってきました。例えばispaceの事業(詳細はこちら)。その黎明(れいめい)期からこれまで、どういうふうにビジネスを育てていけばいいのかを、協賛社を得る手法を宇宙ビジネスに応用して、微力ながらお手伝いさせていただいています。
ispaceは、「惑星探査」ですね。その他に、2021年末の前澤友作さんの国際宇宙ステーション滞在で大きな話題にもなりましたが、有人分野の「宇宙旅行」があり、それから「小型衛星により宇宙から得られるビッグデータの活用」、加えて「まだインフラが行き届いていない地域へのインターネット事業」、大きくこの4つのカテゴリーに弊社で整理していました。(詳細はこちら)
この4つに、堀江貴文さんが創設したインターステラテクノロジズなどの「小型ロケット」も追加して、4+1(ロケットor宇宙輸送)という整理で見たとき、2022年段階の宇宙ビジネスの進捗について、伊達木さんのご意見をお聞かせいただけますか。

伊達木:最近大きな成果が出ているのは宇宙ビッグデータだと思います。つまり人工衛星を中心として、宇宙から来るデータ、宇宙で撮れた情報を、地上での活動に使っていく。昨今の国際情勢の中でも、衛星からの画像が活用されています。また、例えば衛星からのデータを使って農業や経済活動の意思決定、もしくは災害発生時の様子や、環境の状況を知るために役立てることもできます。
鈴木:ビッグデータの分野にJAXAはどう関わっているのでしょうか。
伊達木:民間の企業は、衛星の機能に加え、その衛星からのデータをどのように地上の人たちが社会の中で使っていくか、逆にどんな情報があればビジネスとして回っていくのかを考えます。
JAXAは、その企業の目的のためには、どういう情報が宇宙で取れるといいのか、これまでの宇宙での知見、開発経験を踏まえて、技術的な開発ルートを見つけるためのアドバイスを行っています。また、データの処理や加工について技術面での協力も実施しています。

鈴木:民間企業に積極的に知見を提供されて、かなり具体的なコンサルティングをしているのですね。
伊達木:はい。もちろん企業自身に技術はありますし、われわれの技術がどう役立つかは、さまざまです。JAXAとして、これまでの開発経験、培ったものを、より素早く、企業の方々に使っていただける大変良い機会をいただいています。
鈴木:宇宙ビッグデータの活況は、前回、ウェブ電通報で掲載した2016年(詳細はこちら)段階では想像できないことも起こっていると思うのですが、6年前と比べて、何が進化して、それが可能になったのでしょうか。
伊達木:この6年ということであれば、やっぱりコンステレーション(多数の衛星を統合して一つのシステムとして運用すること)を目指す小型衛星の開発が進んだのは大きいと思います。先ほどのデータビジネスやデータソリューションが、そういうコンステレーションで小型衛星をどんどん打ち上げて、画像を撮り、データを得ていく。
この分野は、日本でも多くのプレーヤーが生まれていて、どんどんビジネス化しています。皆さん衛星を打ち上げ、画像データの取得に成功しており、それを分析してどう使うのかという段階にきています。具体的に使える衛星ができているところが大きな進歩ですね。
民間の、それも1社でなく、複数の会社がそれぞれの良さを出しながら、衛星の打ち上げ、運用をされています。
宇宙ビジネス5カテゴリー。日本の得意分野とは?
鈴木:宇宙ビッグデータ領域の成果をここまで伺いました。伊達木さんから見て、この5領域で日本の得意領域はどれだと思いますか。

伊達木:それでは、今は衛星データ関連でしょうか。得られたデータを使って、何をどうつくってビジネスにしていくかは、日本の技術やビジネスセンスが生きる部分です。
例えば、日本は自然災害が多いため、先読みする能力やどんな情報が求められているのかを知る能力に長(た)けています。それが、良いものをつくり出すことにつながると思います。
まだこれからの領域ですが、惑星探査は日本も頭角を現しています。アメリカもヨーロッパも力を入れていますが、JAXAが開発した「はやぶさ」がよく知られているように、世界に冠たる技術があります。日本としてぜひ先行して開発していきたい領域です。
宇宙旅行は、今はアメリカに先を取られてしまっているところもあるかもしれません。しかし、日本は日本なりの開発が進んでいくと思います。これから期待が持てる分野が、宇宙旅行や、ispaceでも取り組まれている月探査ミッションなどです。
宇宙インターネットと表現されている通信も今は、海外企業が先行していますが、日本としてどうするかというところはまだこれからでしょう。それでもやはり日本の通信技術など世界に誇れる技術は多数あるので、宇宙を掛け合わせて、新しいビジネスが生まれていくと考えています。
鈴木:私たちがご一緒しているispaceは、まさに月面探査。2022年、いよいよ打ち上げも近づいてきています。
伊達木:今年は月へのチャレンジが目白押しですね。
鈴木:今日のお話を通じて、JAXA自身が大きく変わって、JAXAという主語だけではなく、みんな一緒にという形で宇宙を捉えられていることを理解しました。
伊達木:ありがとうございます。宇宙を使いたいという機運が高まっている中で、JAXAとしても、これまでの技術、知見の蓄積をぜひ皆さんと一緒に使い、世界でも活用され、それが日本の力になることを目指していきます。
鈴木:この領域をけん引されてきたJAXAの力を、クライアントの課題と近いところにいる私たちは、ぜひ積極的に活用させていただければと思います。これからもよろしくお願いいたします。
伊達木:よろしくお願いいたします。
鈴木:最後に、皆さまに伝えたいことはありますか。
伊達木:われわれJ-SPARCの、キャッチフレーズの中に、「共創しよう」という言葉があります。キョウソウというと、昔は競う方の競争が多く使われてきましたが、今は「共に創る」の共創が重視されている実感があります。争うのではなくて、共に創ることで、より高みを、より良いものを目指す。宇宙からの技術を使って社会を変えていけることがきっとまだまだあると思いますので、新しい世界へ向けてぜひ皆さんと一緒に進んで行きたいですね。
鈴木:ありがとうございました。多くのクライアントと共創できるよう、われわれも微力ながら尽力していきたいと思います。

広がる宇宙産業プレーヤー。アップデートされるJAXAの役割 | ウェブ電通報 - 電通報
Read More
No comments:
Post a Comment